
2026.04.22
MEDIA
「欲張らず、ちょうどよく熟成された状態で、自分の人生をうまく歩んでいけたらいいなと思います」

GQ 前回「GQ」の撮影のとき、自分のことを「ディミトリー・ビボル」だと紹介していましたが、その間にアマチュアボクシング大会で優勝したそうですね。
DY 子どもの頃からずっとやってきたので、運動は何でも好きです。最近は静かに過ごしていますけどね。
GQ ボクシングが得意なだけかと思っていたら、所属事務所の方によるチャン・ドンユンさんの説明がすごいですね。「チャン・ドンユン。スポーツとは切っても切り離せない男。できない運動はないと思ってください」とのことです。
DY ボクシング、水泳、登山、マラソン、クライミング、サーフィン、乗馬…一通りやりますが、水泳はかなり得意です。自分で言うのもなんですが、まるでアザラシみたいなんです(笑)
いつから始めたのか思い出せないくらい幼い頃からやっているので、いつでも慣れた感じで泳げます。
以前は潜水にハマって、どれだけ長く息を止めて泳げるか試したり、フリーダイビングも少しやっていました。
GQ 本当に体を使うことはほとんど経験しているんですね。これまでやった中で一番変わったスポーツは?
DY バイクにも乗っていました。興味も体力も落ちてきたのと、危険でもあるのでずいぶん前にやめましたが、当時はすごく好きでした。
GQ 柔らかい印象の顔立ちなのに、“男の中の男”感がありますね。そのギャップも魅力ですよね。
そういう“ギャップ萌え”は楽しむタイプですか?
DY 運動神経はある方なので、自分の見た目がスポーツとは無縁なタイプだとは思ったことがありませんでした。俳優という仕事柄、人から見られるイメージがありますよね。そうした評価を聞いて、そうなのかもしれないと思うようになりました。それまでは、「運動が得意そうな顔」というものがあるなんて、まったく考えたこともありませんでした(笑)本当の自分の姿を知ってもらえたらうれしいです。
GQ どんな運動が好きですか?
DY 登山や水泳、ボクシング、自転車のように、一人で黙々と取り組めるスポーツが合っている気がします。
GQ 実際の性格とも関係がありそうですね。
DY自分のペースで運動するのが好きなんです。運動が体にどんな効果をもたらすのかも、わりと考える方ですね。周りからゴルフもよく勧められましたが、体に良い影響があると思えず、なかなか始める気になりませんでした。僕は楽しくてストレス解消にもなり、体にも良いと感じられるものを選んでやるタイプです。

GQ 今日は乗馬場でお会いしましたね。乗馬を始めたきっかけは何ですか?
DY 昔、時代劇ドラマの準備で少し習いました。スピード感もあって、自分に合っているなと思いました。
GQ チャン・ドンユンさんの乗馬レベルを例えるとどのくらいですか?
DY アイアンですね。まだ昇格前、という感じです。他のスポーツはある程度評価されていますが、乗馬はまだ本格的にランク戦すら始めていない段階です。
GQ 乗馬で「少しできる」と言える基準は何ですか?
DY 上手な人は、整備されていない場所で外乗をしたりするんです。そういう経験が多いと、上級者だと見なされると思います。
GQ 外乗はしたことがありますか?
DY ドラマ撮影の現場で、練習を兼ねて全力疾走したことがあります。一度きりでしたが、美しい海辺で馬と一緒に走ったシーンは、とても印象に残っています。
GQ 乗馬の魅力は何ですか?
DY 他のスポーツは自分がうまくやればいいですが、乗馬は馬と息を合わせることが重要で、思い通りにならないところが魅力だと思います。
GQ どんなときに馬と通じ合っていると感じますか?
DY馬に乗るときは手綱で合図を出しますが、あまり強く指示していないのに、まるで気持ちを読んだかのように動いてくれることがあります。人を信じて、絶妙にスピードを調整したり、止まったり、方向を変えたりしてくれるんです。一方で、気の強い馬は自分勝手に動いてしまい、人が木の枝に引っかかってしまうこともあります。

GQ チャン・ドンユン監督の初の長編映画『ヌルク(原題)』がまもなく公開されますね。以前から演出に興味があったのですか?
DY 高校生の頃から漠然と映画監督になりたくて、脚本を書いていました。その夢とは少し違う人生を送ってきましたが、俳優の仕事をする中で少しずつ近づいていきました。短編映画『私の耳になって(映画)』を演出したときに、本格的に演出をやってみたいと思うようになりました。その気持ちが積み重なって、今回挑戦することになりました。
GQ 夢いっぱいの高校生だったチャン・ドンユンさんが書いていた物語は覚えていますか?
DY 当時、ブラッド・ピットが出ている映画『スナッチ』や、ジェイソン・ステイサムが出ている映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』がとても好きでした。ガイ・リッチー監督のユーモアのあるアクションも好きで、ブラッド・ピットもかっこよくて、似たような映画の脚本を書いたんです。自動車整備士の店主が仕入れた車の中から貴重な宝物を見つける、いわゆる“棚ぼた”の話ですが、その車を売った相手が犯罪組織の人間だったんです。それで主人公たちが逃げ回りながら、馬に乗ってアクションする話を考えたのを今でも覚えています。そこにも馬が出てきますね(笑)
GQ ブラッド・ピットに憧れていたなら、演出ではなく俳優をやりたいと思いそうですが(笑)
DY そうですね。でも、俳優をやることは全く考えたことがありませんでした。
GQ 映画『ヌルク(原題)』では、なぜヌルク(麹)を題材にしたのですか?
DY 僕は突拍子もない想像をよくするんです。コロナが流行したときに、キムチを食べると予防に良いという噂がありました。科学的に証明されたものではありませんが。パンデミックの時期にふとそれを思い出して、その頃ちょうどマッコリが好きだったんです。マッコリには体に良いイメージもあるので、「マッコリがコロナ予防に効果があるとしたらどうだろう」と考えて物語を作り始めました。
実際の映画では、特別な麹で作られたマッコリの話に変わりましたが、こういう空想が好きなんです(笑)
GQ 俳優と演出はどう違いますか?
DY 良い俳優は監督の要求をうまく表現できる人で、良い監督は自分の考えがしっかりしていて、すべての選択に責任を持てる人だと思います。
GQ 両方を経験した人ならではの言葉ですね。
DY演出の経験は、俳優としての考え方や姿勢にも役立ちました。演技で行き詰まったり、もっと良くしたいと思ったときに、演出の視点があると視野が広がると思います。監督の中には演技を学ぶ方もいますが、それは俳優にどう説明すればいいのかを理解するためだと思います。
GQ 監督をやってみて、俳優のときには分からなかった監督の苦労も理解できましたか?
DY 監督が何か要求をするとき、俳優は自分の演技だけに集中して、その理由を知りたがりますよね。
例えば「そこで笑わないでほしい」とか「もう少し怒りを強く出してほしい」といったリクエストを受けたときです。僕がモニターの後ろに座ってみると、編集のポイントやアングル、全体の流れなど、何十もの理由を考えてディレクションしているわけですが、それを毎テイクごとにすべて説明することはできないんです。

GQ 俳優の立場は少し違うものですか?
DY 僕自身もそうですが、俳優はそれを自分の演技への指摘として受け取ってしまうことがあります。
演技だけに集中していると、どうしても部分的で狭い視点になってしまうことがあるんです。
現場で広い視野を持てる俳優の先輩たちが「素晴らしい」と言われる理由も、今回よく分かりました。
GQ 俳優・チャン・ドンユンとして一緒に仕事をする場合、監督としてはどんな点が一番大変そうですか?
DY 監督のチャン・ドンユンは頑固ですが、俳優のチャン・ドンユンは言うことをよく聞くので、むしろやりやすいと思います。
GQ 二人の相性は良さそうですね?
DY 性格が似ているので、うまく合うと思います。でも仕事はスムーズに進みそうですが、プライベートで仲良くなることはない気がします。どちらも完全にビジネスとして割り切る感じになりそうです。
なんとなくそんな気がします。
GQ チャン・ドンユンという人は、俳優以外にも挑戦している分野が多く、本当にいろいろな顔を持っている人だと思いました。俳優という職業は、ご自身のアイデンティティの何%くらいだと思いますか?
DY 正確には分かりませんが、感覚的には50%くらいでしょうか。
ワーカホリックな気質があって、仕事をするのは好きですし、たくさんやりたいと思っています。
一方で、俳優ではない一人の人間としての自分の人生もとても大切にしています。家族と過ごす時間も非常に重要ですし、忙しくなると周りの人に少し疎かになってしまうこともあるので、どちらも大切にしながらうまく保ちたいと思っています。俳優以外の50%は、人としての生活や趣味を楽しみながら過ごしていきたいです。

GQ 演技、運動、演出までさまざまなことに挑戦し、良い結果も出してきました。
そんなチャン・ドンユンさんを動かしている力は、才能でしょうか、それとも最後まで諦めずに努力し続ける性格でしょうか。
DY 後者だと思います。僕は推進力がある方なんです。人は新しいことに挑戦する前は、まず否定的になりがちですよね。でも、結果が分からない状態で始めるのは誰にとっても同じです。うまくいくかどうかは、やってみないと分かりません。僕が23歳のときに突然「俳優になる」と言ったときも、周りの約90%は「どうやって?」という反応でした。でもそのとき挑戦して俳優になることができたので、後悔はありません。もし周囲の懐疑的な意見に従って就職していたら、今の自分はいなかったと思います。そうした決断を下す勇気こそが、僕の推進力だと思います。
GQ ただ自分を信じていたということですか?
DY 僕は突出して何かができるタイプではありません。先輩方が言うには、本当に才能がある人は、自分がやりたくなくても周りがその道に引っ張っていくそうです。何としてでもその道へ導かれる、と。でも僕にはそういう才能はありませんでした。勉強も運動もそこそこできましたが、それを仕事にできるほど圧倒的な才能があったわけではありません。だからこそ、いつも自分で決断し、勇気を出して始めなければいけないんです。
GQもう一度勇気を出して挑戦したいと思っている夢はありますか?
DY 今はこれ以上は持たない方がいい気がします(笑)社会人としてのスタートが俳優だったので、俳優が僕にとって唯一の仕事です。だから今は、本業にもっと集中したいです。
GQ 今のチャン・ドンユンさんは、もう発酵を終えた状態ですか、それともまだ熟成中ですか?
DY まだかなり熟成が必要だと思います。むしろ、これから発酵が始まったばかりだと思いたいです。
GQ チャン・ドンユンさんは、どんな麹(ヌルク)ですか?
DY お酒を作るときは、精製されて安定した日本式の麹をよく使います。
でも僕は、まだ発酵が始まったばかりの伝統的な麹のようなものだと思います。荒くて、生きていて、まだ途中の状態です。
GQ どんな味になっていくのでしょうか。
DY マッコリも発酵が進みすぎると酸っぱくなりすぎますし、逆に発酵が足りないと甘すぎます。
僕はバランスを大事にする人間なので、何でもほどよい状態がいいんです。
GQ その“バランス”が一番難しいですよね。
DY 発酵を仕事に例えるなら、無理に追い込んで人生が乾いてしまうのも嫌ですし、逆に十分に熟成していない麹を早く取り出して、ジュースのように甘いだけのお酒になってしまうのも望んでいません。欲張らず、ちょうどよく発酵が進んだ状態で人生を歩んでいけたらいいと思います。ちょうどおいしく熟成したマッコリのように。
画像提供:GQ KOREA提供
出処:https://www.gqkorea.co.kr/?p=372089