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2026.04.22

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cine21インタビュー “ 映画『ヌルク(原題)』チャン・ドンユン監督 ”

本来の味が引き出されるまで、心を込めて —— 映画『ヌルク(原題)』チャン・ドンユン監督



ドラマ『カマキリ』(2025)以降、しばらく次回作の知らせがなかった俳優チャン・ドンユンが、映画『ヌルク(原題)』で帰ってきた。

しかし、ポスターに記された彼の名前の横にある肩書きにはどこか違和感がある。
「俳優」ではなく「脚本・監督」と記されているのだ。

実は以前からチャン・ドンユンには2つのシナリオがあった。
俳優として出演するためのシナリオと、自ら執筆したシナリオである。
映画『ヌルク(原題)』は、短編映画『私の耳になって(原題)』(2023)に続く2作目の監督作であり初の長編監督作品でもある。

マッコリ醸造所の娘である女子高生ダスル(キム・スンユン)は、特別だと信じてきたヌルク(麴)が消えてしまったことをきっかけに、ヌルクを探しに出る。

4月15日の映画公開を前に、チャン・ドンユン監督に会った。
幾度となくシナリオを書き直してきた時間と、現場で背負う責任について語る彼の表情は、どこか厳しさを帯びながらも、確かな高揚感に輝いていた。映画について語れば語るほど、自身があらわになっていくもの。

新たな一面を見せたチャン・ドンユンの物語を届ける。



― 最近映画館でどんな映画を観ましたか。初の長編監督作品の公開を控えているとのことですが、演出を意識しながら鑑賞していましたか。

そうではなく、いつも普通の観客として映画を観ています。少し前に『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を、時間を忘れるほど夢中になって観ました。スケールの大きさには驚かされましたが、焦点はグレース(ライアン・ゴズリング)に当てられていたように感じました。人に関心を持つタイプなので、どうしても登場人物に注目してしまうのかもしれません。

― 初の長編の現場を振り返っていかがですか。天候には恵まれましたか。

天気は良かったのですが、本当に寒かったです。1月に地方で1か月以上撮影したのですが、風があれほど冷たく感じられるとは思いませんでした。
もともと寒さにはあまり強くないのですが、どうしようもありません。監督としてその場に踏みとどまるしかありませんでした。


― マッコリは馴染みがあっても、ヌルク(麴)はあまり知られていないと思います。
どのようなきっかけで関心を持ち、長編の脚本を書くまでに至ったのでしょうか。

コロナ禍の期間は病気や治療について考えざるを得ない状況でしたが、その中で「キムチがコロナを退治する」という噂を耳にしたことを思い出しました。そのとき、コロナを治す“奇跡のマッコリ”を想像しました。当初は、話題の中心にいるマッコリの製造者がさまざまな事件に巻き込まれるブラックコメディを構想していました。しかし、監督を始める段階で規模を大きくすることに負担を感じましたし、現実的な条件も整いませんでした。そこで、マッコリの根本とも言えるヌルク(麹)へと視点を移し、そこから別の想像へとつながっていきました。
神秘的な力を持つヌルクが失われ、それを探しに行く主人公。その様子を見守る周囲の人々のそれぞれ異なる反応、それらの反応に向き合う主人公のリアクション。内側へと収束していく物語を作ることで、先ほど述べた「人」への長年の関心を掘り下げられるのではないかと考えました。


― 俳優活動をしながら、脚本作業はどのように進めていたのでしょうか。

ドラマの撮影準備期間と重なっていたため、合間を縫って少しずつ書いていました。
とりあえず動き出して締め切りに合わせて完成させる“締め切り型”の人間なので、スタッフと共有したスケジュールに沿って進めていきました。それでも最終稿に至るまでには1年以上かかりました。



― 
自分を男子高校生として主人公にする方が、より簡単な選択だったのではないでしょうか。それでもそうしなかった理由は何ですか。

当初の構想では、男子大学生で醸造所の息子という設定を考えていました。自分が演じるつもりでもあったので。
ただ『私の耳になって(原題)』のときに演出と演技を同時に経験したことで、現段階ではどちらか一方に集中する方が良いと判断しました。
それに、酒を好む成人男性がヌルクを探し回る話が、そこまで面白くなるとも思えませんでした。


― ダスル(キム・スンユン)が同年代の友人たちと学校生活を送る様子も多く描かれていますが、自然さを出すために取材が必要だったのではないでしょうか。

それが本当に難しかったです。女子生徒特有の雰囲気は私には分からない領域ですし、最近の学生がどのような感じなのかも、もう分からない年齢になっていました。
そこで、キャスティングした学校の先生に細かく話を聞き、実際の生徒たちを観察しながら、服装や話し方などを参考にしました。その要素を作品に取り入れ、セリフにも落とし込みました。


― マッコリを突然要求する集団が繰り返し登場し、何か事件が起こりそうな緊張感を生み出していますね。

ダスルがヌルクを探し続ける過程が、観客にとっては不思議に映る可能性もあると思いました。
マッコリに執着する人々がダスル以外にもいることで、「ヌルクには何か本当にあるのではないか」という印象を与えられると考えました。


― ヌルクを探すダスルに向ける家族の視線は、それぞれ異なっています。
ダスルと普段は仲の良い父(パク・ミョンフン)は、ダスルの行動を理解しているように見えますが、実際には無関心に近い存在でもあります。
一方で兄のダヒョン(ソン・ジヒョク)は、ダスルをいつも快く思っていないように見えるものの、誰よりも彼女のことを心配しています。

不器用な父親を通して、一般的な家族像を描きたかったのです。
誰しも一度は、家族の視線が外の世界のそれと大きく変わらないと感じたことがあると思います。
また、兄弟姉妹にはそうした側面があります。私と実の兄の関係もそうで、普段はぶつかり合っていても、お互いの気持ちを理解しようとする瞬間があります。ダヒョンが妹に付き合ってお酒を飲んでみたり、彼女を追いかける姿は、観客の共感を呼ぶのではないかと考えました。



― 
長編規模のスタッフや俳優を集めるのは初めてだったと思いますが、大変ではありませんでしたか。
キム・スンユン俳優は前作の短編『私の耳になって(原題)』に出演しつつ、助監督としても参加されていますね。

これまで現場でご縁のあった方々に協力をお願いしました。パク・ミョンフンさんのように同じ作品に出演した方々が多く、プロデューサーのイ・テドンさんの尽力が非常に大きかったです。
イ・テドンプロデューサーは『中小企業物語』シリーズを手がけた監督でもあり、インディペンデント映画の制作を通じて親しくなりました。その力添えのおかげで、身に余るほど素晴らしいスタッフ陣を揃えることができました。


― 小さな窓から柔らかい日差しが差し込む醸造所は、どのように見つけたのですか。

実はリアルな醸造所であれば、あまり光が入らない方が自然なんです(笑)現実的には暗めにすべきか悩みましたが、醸造所を舞台にした映画をいくつか調べてみると、意外と光を取り入れている作品が多かったんです。
そこで映画的な画作りを優先して今のような構成に決めました。醸造所とダスルが通う学校、ダスルの家は、父や父の知人の縁のある慶州(キョンジュ)や盈徳(ヨンド)で撮影しました。
本当に多くの方に支えられて完成した作品です。


― これまでディレクションを受ける立場から、与える立場になってみていかがでしたか。その場で即座に判断しなければならない場面も多かったのではないでしょうか。

「ここまで確認しないといけないのか」と思う瞬間が本当に多かったです。すべての人が正解を求めてくるのですが、実際にそんなものがあるわけもなく……(笑)
それでも監督は現場に信頼を与える役割だということだけは強く意識していました。分からないそぶりを見せないようにはしていましたが、それがバレていなければいいなと思っています。


― 演出をする中で新たに興味を持った分野はありますか。

撮影です。『ヌルク』では撮影と照明を同時に担当したイ・スンビン監督と宿泊を共にしました。
撮影後に部屋へ戻ってレンズを実際に触ってみたり、疑問に思ったことを質問したりする中で、書籍で学ぶのとは比べものにならない楽しさを感じました。自分が望遠レンズを好むということもこのとき初めて知りました。
この経験をきっかけに写真の勉強も始めています。もちろん「それで良い作品ができるのか」という疑いがよぎることもありますが、今は「知りたい、撮りたい」という気持ちに従っていこうと思っています。


― 後で「もっと撮っておけばよかった」と思うことはありませんでしたか。

ないわけがありません。なぜ現場でできるだけ多くのカットを押さえようとするのか、その理由がよく分かりました。
俳優として現場の大変さも理解しているので、欲張るというよりは折り合いをつけることが多かったです。もちろん、今同じ状況に戻っても同じ選択をすると思いますが、それでも現場ではできる限りのことはしました。
リハーサルも十分に行い、撮影したカットを現場の編集担当とつなぎ合わせながら、問題が見つかればすぐに解決策を探るようにしていました。


― フェードアウトやブラックカットを多用されていますが、観客にとって流れが途切れてしまうのではないかという不安はありませんでしたか。
また学生時代に詩を書かれていたこともあり、行間のような“余白”を意識されたのではないかとも感じました。

そうではなく、現実的な理由が大きいです。仕上げ作業の過程で、脚本と実際の展開の順序が大きく変わりました。
どうつなぐか悩んだ末にフェードアウトを試し、ブラック画面を数秒挟む構成にしてみたところ、感触が良かったんです。観客の方にも同じように感じていただけたらと思っています。



― 
人に対する好奇心について何度か言及されていましたが、どのような人間の側面を描く物語に惹かれるのでしょうか。

映画を観ていると、心を強く揺さぶられる瞬間があります。
とても苦しい状況の中でも喜びを見いだした表情を見ると、言葉では説明しがたい感情が込み上げてきます。「人はどうしてそんなふうでいられるのだろう」と思い、もっと知りたくなるのです。
反対に、成功した人が順調に生きていくような予測可能な物語にはあまり惹かれません。幸福の中にある孤独のような皮肉に魅力を感じますし、監督としてもそうした物語を描きたいと思っています。


― ダスルにとってヌルクは、他人には取るに足らないものに見えても、本人にとっては大切なものです。
チャン・ドンユン監督にとっての「ヌルク」のようなものはありますか。

これまでの人生の中で形づくられてきた価値観が、それに当たるのだと思います。
10代は教育熱の高い環境で過ごしました。良い大学に進むという一つの目標に向かって懸命に走る一方で、「なぜこのように生きなければならないのか」という疑問も生まれ、まだ知らない社会への好奇心も次第に大きくなっていきました。抑え込まれた気持ちは詩を書くことで発散し、映画のような芸術に慰められてきました。勉強以外の活動をしていると、周囲から少し変わっていると見られることもあり、最初はそれが辛く感じられましたが、やがて気にならなくなりました。むしろ、自分の視点が独特であることに気づき、「自分は自分の道を行けばいい」という不思議な自信も生まれました。

そうした経験があって、今こうして映画を書き作ることができているのだと思います。
そのような自分自身の姿を『ヌルク』にも投影しました。自分の信念に従って行動しているだけなのに、周囲から向けられる厳しい視線に、ダスルが感じる悲しさを描いています。


― 今後の活動についてはまだあまり明らかになっていませんが、少し教えていただけますか。

『ヌルク』の公開は自分にとってとても大きな出来事なので、まずはこれに集中したいと考えています。公開が一段落したら、現在構想している脚本や次回作の準備にも取り組んでいく予定です。

画像提供:cine21提供
出処:https://cine21.com/news/view/?mag_id=109746